覚悟

ここのところ、父の容体は思わしくない。
軽い肺炎を繰り返していて、辛そうな状態が続いていた。

午後、お昼を済ませた頃に携帯の着信音が鳴った。父の入院先の病院からだった。

電話を取ると師長の声で「ただ今、主治医と変わります」と言う。その瞬間、胸がズキン…と音を立てる。

「お父様は、大分体力が落ちていらっしゃいます。肺炎を繰り返す回数も増えてきてますし、なかなか効くお薬がなくなってきているんです。申しあげにくいんですが…急変ということも、考えておいて下さい」

胸が詰まった。
とうとう、とうとう、「その時」がやって来るのか。

父と私は、特殊な関係にある。
アルコール依存症であった父と私は「共依存」の関係なのだ。

特に、母を早くに亡くしている為に、「親子」の密接度は高かったと思う。
父が「脳腫瘍」を患った時には、約二ヶ月間、私は毎日、病院に通った。
私が「子宮癌」を患った時には、約三ヶ月間、父は毎日、病院に通ってくれた。

これまで、助け合って生きて来た親子なのだ。
「父」の姿が消えてしまうなんて耐えられない。
「お父さん」と、呼びかける人が、この世から消えてしまうなんて…おかしくなりそうだ。

そう、思っていたのだけど。
それは一年前までの私。

今夜、父を見舞いに行った病院で、入院時の面接を担当していたソーシャルワーカーにバッタリお会いした。

「最近、よくいらっしゃるけど、お父様、お悪いの?」

私は、泣くことなく、主治医からの電話の話をした。

「あなた、一年前に比べて強くなったわね」

涙を浮かべて言って下さった。そう。私は強くなった。

一年前、私は父が熱を出せば…弟の携帯に電話をかけまくり、泣きながら「今、すぐに病院に来て!」と言った。
弟は、責任のある地位にある為に、それは出来ないと言う。そんな弟を「冷たい」となじり、兄弟の間は最悪な状態になっていった。

それから…。私は学んだのだと思う。冷静にもなった。
今の病院に転院したのが、昨年の10月29日。「時間」というものが、私の心を落ち着かせ、物事を冷静に見る目を与えてくれたのだろうか。

今夜の父は、胸でハァハァと息をして…見ていてもその辛さが伝わってくる。
けれど「お父さん」という呼びかけに「ああ」と答えてくれたことが、嬉しかった。希望に思えた。


父のことを知らせた友達からの返信メール。


まだわからないけど、もし本当に少ない時間だったら、奈津がずっと一緒にいてあげてほしいけど。
もしお父さんが苦しんでるんなら、早く楽になってもらいたいと思うかな。
私だったらね。
たぶん、亡くなるのは自然のことだから、無理して生きているほうが不自然なことだと思うよ。
自然に帰ると思えばそんな悪いことじゃないんじゃないかな。


私は、この人と友達でいることを誇りに思った。「運命」を受け入れて生きていく。
その覚悟を私に教えてくれた。

会えるだけ、私は父に会いに行く。
後悔だけはしないように…。




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2011/10/18 03:15 | 父のことTRACKBACK(0)  TOP

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