車椅子にはまだ乗らない…Ⅰ

今、私は歩くときに杖を使う。

進行性筋ジストロフィー。13歳で発症し、現在に至る。

診断された13歳の時には、病名が与える重い印象よりも症状は軽かった。日常生活にそれ程の支障は感じない。時々「表情が無いね」と友達に言われて傷付いたり、体育の授業の時に腹筋が出来ず「オマエはもういいから…」と教師に呆れられたり…。

そんな状態でも、私の進む道は「舞台」だと信じ、ひたすらに突き進んだ。
朝から夕方までは建築事務所でアルバイト。夕方から22:00迄は劇団の稽古。そして稽古が終わると、先輩に(半ば強制的に)誘われて飲み屋へ。終電間近まで汗
思えばハードな日々だったなぁ。こんな私のどこに、あんな根性があったのだろうか。

私は「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー」と診断された。筋ジストロフィーは様々な種類があるのだ。


<肩甲上腕型筋ジストロフィー>

顔面と肩周囲の筋が主に障害される筋ジストロフィーで、ゆっくりとした進行の経過をとります。
年間の発症率は10万人に5人ぐらいで比較的多い疾患です。発症は6~20歳で、手を挙げることが困難になるのが初発症状です。
両側の顔面筋の筋力低下が特徴的です。眼輪筋、頬筋(きょうきん)や口輪筋は障害されますが、咬筋(こうきん)、外眼筋(がいがんきん)、咽頭筋(いんとうきん)や呼吸筋は保たれます。
周辺の筋萎縮のため肩甲骨が翼のように突出して、あたかも“天使の翼”のようにみえるという特徴が出現します。
腰部の筋肉は後年に障害され腰椎前弯(ようついぜんわん)が生じますが、歩行不能になることはほとんどありません。
心筋障害はまれで、精神発達遅滞も生じません。第4染色体上の遺伝子異常が原因と考えられていますが、特定の遺伝子はまだ見つかっていません。

んー。

歩行不可能になることは、ほとんどありません。

だから安心していたのだけれど。
30歳のある日、横断歩道を渡る途中…突然に大きく弧を描いて飛ぶように転んだ。ビックリした。ただの平らな道路で、何故、突然転んだのか。

その訳は段々と分かるようになる。足首の筋力が極端に落ちた為、歩行時に爪先が上がらない。けれど、自覚が無いので爪先が道路に引っ掛かり、転倒する。
それ以来、走ることは出来なくなっていった。

そんな症状が出始めた最初の頃、沖縄での映画の撮影の話がきた。やってみたい!どうしても、やりたい!
但し、走るシーンがあるのだ。躊躇した。沖縄の離島まで行って、いざ「走れません」では通らない。けれど、この仕事を紹介してくれた友人は「行ったもん勝ちよぉ!」と言った。
へええ!そういうものかな…じゃ、行くか!
行ってみて本当に良かった。
自由時間。
沖縄の離島。50ccのバイク50ccを借りて山を走り回ったり、民宿の子供に「ネーネー(お姉ちゃん…を指す沖縄の方言)、行こう!」と誘われて海に入る。足元で拾ったウニを割り、「はい、どうぞ」と差し出されて泣きそうになる。私、ウニ、苦手なの200810122
ウニが人を刺すって初めて知った。海から上がると、ナマコの発したヌルヌルの液体が足に絡み付いていて気持ちが悪かった。

でもね!海には黄色い蝶々魚が沢山泳いでいて…あれ以来、私は沖縄と、南の島の透き通った海に取り憑かれたハート


            フィジーの浜辺



思えば、あれが「私が走った」最後の記憶なんだなぁ。

映画の走るシーン、スクリーンで目にした時は椅子からずり落ちた。本当に!走る…と言うよりも、ピョンピョン飛んでいる感じ。でも、監督は「個性的で良いね~」と言ってくれたっけうさぎにんじん

未だに、自分が走っている夢を見る。驚いて目覚める。すると、現実が甦る。なんだ…夢か。

でも、まだ自分の足で歩けるさ!一歩、足を前に出せば進めるさ!諦めたらお終いだよ、ね!

-続く-



2008/11/10 18:10 | 筋ジストロフィーCOMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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