父の手紙 -生きる意味-

ここのところ、自分のことで忙しくしていて父を見舞うことが出来ない。
一日に一度、決まったように掛かる電話も、ここ数日ない。気にかかる。元気にしているだろうか。

明日は朗読会の衣装合わせ。
日曜日には会いに行こう。

父が知人に宛てた手紙。胸に迫る文章だった。

「手紙」

すでにはお聞き及びのことと思いますが、小生10日ほど前に下記に転院いたしました。
半ば強制的でした。すったもんだした挙句です。
ここは前施設と違って面会も通信も自由ですが、不自由、不便この上なく、筆舌に尽くし難く見舞い客など皆無です。もし、見舞いをとお考えなら止めにして下さい。
晴れて退院(只今、交渉中)のあかつきには都内某所にてお祝いを盛大にやりましょう。
今までのご縁をないがしろにしたくないと思うからです。
この件、如何?
とにかく、一日も一刻も早く自由になりたいという願望は、以前にも増して強くなっていることは確かです。
主治医が一週に一度しか登院しないので、この機会を逃すと、次の週まで話はお預けということになります。
起床は6時。就寝は9時。病院の日課です。

眠りたいだけ眠り、起床はそれから。先ず風呂・湯上りにBeer、湯には水割りのWhisky。自由が欲しい。まるであの世のメニューです。
でも退院すれば、即実現するも可。やってみたい。寝言みたいなことで御免なさい。

お暇の節、又は気がむいた時、お便りください。
貴女方のお便りが先?もしくは小生の退院が先?お便りは強制ではありません。
朝夕の冷え込みが強くなりました。
御身、御大切に。
又の日に。

これだけの文字が、葉書一枚にびっしりと書かれている。父の思いがどれだけのものであるか、嫌でも伝わってくる。涙が出そうになった。
病院の外に出ると、秋風が頬をなでる。これまでよりも冷たくなった。八王子の気温は低い。
もう「秋」ではなくて、「初冬」なのだ。慌しい日常は、時間の感覚さえ虚ろにする。

けれど、父の一日はさぞ長いだろう。永遠とも思える時間がそこにはある。
人間として。生きる意味。


                   自由


私は、文化学院で「自由」について教わった。素晴らしき自由、けれどその一方で責任も負わなければならない。
人は一人では生きていかれないのだ。

でも、そんなこと、今の父には「余計なお世話」なのだろうな。

生きる。容易いことではない。


2008/11/08 01:47 | 父のことCOMMENT(4)TRACKBACK(0)  TOP

コメント

ゆみこ様

よく父に「放っておいてくれ」と言われる。それが出来れば、どんなに楽か…。
「より良く生きる」なんて、綺麗ごとに聞こえるかもしれないけれど。放ってはおけないのよね。ちゃんと生きて(生活して)くれないと。
だって、いちいち救急搬送された父の元に、一年の内に何度駆けつけなければならないか。
将来の自分を見るようで…しっかりしてよ!と思うと同時に「自分もしっかりしなくちゃ!」と思うのさぁv-356

No:126 2008/11/09 22:28 | Natsu #- URL編集 ]

Re: 父の手紙 -生きる意味-

本人の意思に
迷いがないし、
家族に頼るつもりもないし、
たいしたものだと思います。

No:123 2008/11/09 12:32 | ゆみこ #- URL [ 編集 ]

daria様

深いなぁ!そうか…これは、娘の仕事だったのか。
損な役回り、嫌な仕事ね^^;
せめて…「独りで寂しい」なんて可愛いことを言ってくれるのであれば良いんだけど。
「一緒に暮らす?」と聞くと「それだけはご勘弁を…」と言う。勘弁して欲しいのは、こっちの方よe-2

No:121 2008/11/09 01:57 | Natsu #- URL編集 ]

Re: 手紙 -生きる意味-

余計な御世話を言いたくなるのは、娘の仕事。愚痴を聞かされるのも娘の仕事。えらい仕事だよ。娘って。
独りで寂しいという身内の傍にいて、いるよって言ってあげるしかない。切ないね。

No:120 2008/11/08 21:29 | daria #- URL編集 ]

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