二日目 - 夫の言葉 - 

ハウスキーパーも帰り、バルコニーには静寂だけが残った。

二人で上を見上げると、そこは暗闇に無数のきらめく粒をまき散らしたような、深い空。満天の星空があった。

言葉を失う。

「ね!僕、こんな夜空、プラネタリウムでしか見たことないよ!」

夫の声は興奮していた。

「そうだよね…。東京の空は明る過ぎる…。人工の光で、空の灯りは消されちゃっているものね…。
あ、天の川って知ってる?」

「うん、プラネタリウムでしか見たことないけどね」

ほら、あそこ…と私が指さす先には、鮮明に形を現した天の川が広がっていた。
私も、目にするのは久し振りのことだ。
その後、二人は流れ星を見つけようと、バルコニーに寝ころびながら、ひたすらに夜空を見つめていた。

フレンチポリネシアの島の空気は乾燥しているので、夜になって外に出ると涼しく感じる。
けれど、そんなことは気にならない。
この夜、夫は生まれて初めての「流れ星」を見つけ、二人で満足して部屋に戻った。




翌朝、昨日の疲れもあって、久し振りに…本当に久し振りに、ぐっすりと眠った。こんなに心地よく眠ることが出来るなんて。私はこの「自然」以外に何もない島に感謝した。

「おはよう」

隣で寝ていた夫も起きた様子。するとベッドから上半身を起こして、言った。

「昨夜、あれから眠れなくてさ…。Natsuが寝た後、又、一人でバルコニーに出て星空を見ていたんだ」

「へえ、全然気が付かなかった」

「でさ、思ったんだ。最近、ちょっと、Natsuに無関心だったなぁって」

え?
私は何だか、心臓が苦しくなった。

「今、何て言ったの?」

「だからNatsuに対して、無関心で悪かったなぁって…」

「何?何?それって一体、どういうこと?もっと、きちんと言って!」

朝の起きぬけから、私は冷水を浴びせられたような気持ちになる。ここは、フレンチポリネシアの島だというのに。
それに、今日からなのだ。旅の本当の一日が始まるのは。

私の目が真剣に光っていることに、ようやく気付いた夫はハッとした様子だった。

「あ、何でもないよ。何でもない。深い意味はないんだ」

夫婦の間で「無関心」という言葉。

その後は、夫のペースに引き込まれてしまって、この時以降、「無関心」という言葉が彼の口から出ることはなかった。
いつもニコニコと温和で、冗談を言ってみせては笑う夫。

私が全く気付きもしないところで、彼はそんなことを思っていたのだ。

続けて「無関心」について質問を浴びせようとした瞬間、バルコニーのドアをノックする音が聞こえる。

「イヤオラナー」(お早うございます)

朝食のルームサービスだ。

この、とても魅力的な朝ご飯のせいで、その後、もう同じ質問をすることはなくなる。それは、帰国した今でも。
彼は思うところなく発した言葉なのかもしれないけれど。
私の心に、ちょっと引っ掛かった「言葉」。

これは「夫婦」という関係に胡座(あぐら)をかいていてはいけませんよ…と、南の島の神様が私に教えてくれたのかもしれない。




「イヤオラナー」

二人で、ベッドから飛び降りる。昨夜と同じ調子で。

「イヤオラナー」

と返す。
そこには、満面の微笑みを浮かべたホテルのスタッフが、左の肩に大きなトレイをのせて立っていた。

昨夜、お願いしておいたルームサービス。本当は、ホテル内にある「バニラ レストラン」に出掛けるらしいのだけど、私の車椅子を見たホテルのマネージャーが親切な申し出をしてくれた。
(これは、お願いすれば、どの宿泊客でも受けられるサービスだった)


わぁ!久し振りのアメリカンブレックファースト!賑やかで、色が沢山ある ペコちゃん はぁと



朝食 全景



卵料理は、二人ともオムレツ&ソーセージ&ベーコン。カロリー高そうだけど、いいよね!南国だもの!


朝食1



フルーツ1



うーん。この黄色くて丸い果物。この島で初めて目にした。昨日のプールサイドバーでも食事に添えてあったけれど、苦手。
丸くて白い、らっきょうみたいなものも。ライチに味が似ているのかな…と期待して口に入れてみたけれど、今度は誰も見ていないので、遠慮なく…口からペッと吐き出した。


今日、本当の島での時間は「今」から始まる。



空1




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2009/06/11 12:21 | 旅行のことCOMMENT(4)TRACKBACK(0)  TOP

コメント

れんげ様 

うっe-263 れんげさんて、何て優しい人なんだろう。その気遣い、有難うe-414

夫は普段、そういうことを言う人では無いと思っていたので、尚更、心に響いたの。彼の潜在意識にあるのだとしたら、彼が自分の本心に気付く前に、私がちゃんと綺麗にしている奥さんにならなくちゃね^^;

この島は不思議よー。海と太陽と星空しかないからか、時々、魔法のようなことが起きる。私達夫婦も「最初の出会った頃」に戻っていったのかも。

ああ、れんげさんのコメント、「物は言いようだな」って凄く思った。れんげさんの人柄が十分に伝わってきます。本当に有難うe-420

No:1002 2009/06/13 02:17 | Natsu #- URL編集 ]

Re: 二日目 - 夫の言葉 - 

ご主人の言葉・・・ 気になるねi-230
でも 「最近ちょっと・・・」だから いいんじゃない?
そのうち「気がつけば いつからだかわかんない位 ずーっと前から・・・」って 空気みたいに
なって行くんだなぁi-229

それにしても 星空の下でNatsuさんに思いをはせていたなんて ロマンチストだわぁi-176
無関心と言うのでなく 必要以上に気を使う関係から脱皮したって事じゃない?
その上で「もっと大切にしなくちゃなぁ・・・」って思ってくれたんだよ!!きっとi-236 
やっぱりロマンチストだi-176

No:1001 2009/06/13 01:48 | れんげ #uvrEXygI URL [ 編集 ]

日日是好日@ゆうこ様

おお!きっときっと、35年前の徳之島では満点の星空☆ 綺麗だったでしょうね。
今でも、ちょっと自然の深いところでは見られますよね。宇宙の不思議に見とれてしまいます。

ゆうこさん、南国の果物、苦手なんだ!じゃ、いつか遊びに伺う時のお土産は南国のフルーツにします。…って、「饅頭こわい」ですね、落語の。アハハ。そんな意地悪はしませんから、安心してね。

国立・神経センター 武蔵病院e-376
それぞれ事情(受診する科)は違うのだけど、主人&父&私…と三人でお世話になっています。出来たら、父の二週に一度の通院の付き添いと、私の診察日が合えば丁度いいのにねe-351
上手く合わなくて、度々通院しています(笑)

わぁ。やっぱり、ここに来ている人は、ホント!「一緒、一緒!」っていうことが多くて嬉しいですe-414
フフフ、見掛けたら、声を掛けて下さいね!きっとね!

No:1000 2009/06/12 18:00 | Natsu #- URL編集 ]

満天の星♪

こんにちは、ブログ読んでいて
『満天の星~♪』って思ったら

岡村孝子が目の前を横切った。。っていうか頭に浮かんだ(爆)

頂戴って手を重ねれば、☆粒が落ちてくるんじゃないかってくらい、いっぱい光っていたでしょ

タヒチの空は知らないけど、35年前の徳之島でそう思った事があったよ

いい時間が過ごせたね。

南国の果物って、プルプルしてて色鮮やかでおいしそうだけど全てにおいて独特な味と香りがするよね

私自慢じゃないけど、パパイヤ・マンゴ・・・ドラゴンフルーツまで、全て苦手
だから、とても安上がり(爆)

PS

Natsuちゃん、神経センター病院に通院してるの?
月1回のペースで受診してるよ
病院で会えるかもね(笑)。。。もしかしたらすでにすれ違ってるかも

No:999 2009/06/12 14:37 | 日日是好日@ゆうこ  #SFo5/nok URL編集 ]

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