アルコール閉鎖病棟

切ない。本当に切ない。

「人」としてこの世に生まれ、教職と絵描きの二足のワラジで家族を養い、定年まで全うし。
やっと、絵だけを描いて暮らせる人生に恵まれたというのに。

父のことだ。

先日、父は喜寿の誕生日をアルコール閉鎖病棟で迎えた。主治医に無理にお願いして、どうにか「外出許可」を貰い、外に連れ出した。

高級なレストランではなくて、近所のファミレスで食事をする。病院に戻る時間まで僅かだから仕方ない。それでも父は「美味しいな!」と満足そう。その笑顔が又、私の切なさを募らせる。
食事の後、父のマンションに一緒に行った。久し振りの「我が家」に「家の風呂は最高だな!」という父を見ていて、涙がこぼれそうになった。

自分の人生じゃん!閉鎖病棟で…鍵のかかったドアから自由に出る事も許されず。「自業自得」と言われればそれ迄。問題は、後、父の残された人生をどう生きるかということだと思うから。

医師からは「一生、自宅には帰ることは出来ません」と言われ。そんな事とは夢にも思っていない父は、一刻も早くマンションに帰る事の出来る日を待っている。

転院を…と言う主治医に勧められ、八王子のアルコール病棟のある病院に見学に行った。父と主人と三人で。
そこは寂しい寂しい場所にあった。八王子市外。深い森の中の細い道。車で通ることが出来るのが不思議なほどの細い道が、くねくねとどこまでも続く。すると視界が開けて、唐突に病院が現れた。

広くて清潔感があって、充分な環境に思えた。その時は。けれど、ぬぐいきれない違和感が。人が居ない。不思議なほど人の姿がない。病院の建物が立派であるが故に、違和感はどんどん大きくなる。

「姥捨て山」という言葉が頭に浮かんだ。

父はアルコールによる多少の痴呆の気はあっても、それは77歳という年齢を考えれば当然のように思う。只、お酒が。致命的なのだ。「依存症」という病気は恐い。自分の意思とは別の所で、お酒に手が伸びてしまう。依存症の患者に一人暮らしは危険過ぎるのだ。


                  カクテル
               


5月の初旬、てんかん発作により一瞬、心臓の止まった父は救急搬送された。その時は、ただ生きて欲しかった。生きていてさえくれれば良いと、それだけでいいと…心から願った。

けれど。人生は残酷だ。奇跡的に助かった命。助かったが故に、「人」としての権利を奪われようとしている。それも、父の命を守るために。この矛盾。自由を奪われ、閉じ込められ、それでも生きるのか。

私は「甘い」とよく言われる。情緒的になり過ぎなのだと。だけれどね…そんなに割り切れるものじゃないのですよ。だって、私たち姉弟を育ててくれた父だもの。

切ない。今日みたいに雲がたれこめる日は、切なさも格別です。

2008/10/05 14:51 | 父のことCOMMENT(3)TRACKBACK(0)  TOP

コメント

Re: アルコール閉鎖病棟

此れまで苦労して来られたお父さまが、仮令一時でも長く、そして少しでも多くの心の安らぎと幸福を感じて戴ければ嬉しいですね。
奇しくも、私のマイミクさんの日記もアルコール依存症の方に関するものでした。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=954822245&owner_id=3701377

自分の無知と無力が情けないばかりです。
(ごめんなさい!勝手にこの日記のURLをマイミクさんの日記のコメントに貼らして戴きました。)

No:12 2008/10/08 11:04 | いわた乃隠居 #- URL [ 編集 ]

マー様

ま、まぁね。しかし、それを言っちゃぁお終いよ。
本人の自覚なくしてお酒を呑んでしまう行為を「依存症」と言います。
本当は、本人が意識をして留まれれば良かったのだけどね…。

No:3 2008/10/06 21:39 | Natsu #- URL [ 編集 ]

Re: アルコール閉鎖病棟

本人が意識をして変わるしかない。

No:1 2008/10/05 22:49 | マー #- URL [ 編集 ]

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