8年前の春 - 命拾い - 

8年前の春の「回想」は、今日で終わりにします。一応ね。

でも、きっと手術の日、5月28日には又…浸ってしまうんだろうなぁ 冷汗ハート
何しろ、普段から「芝居がかってる」と友達に言われる私ですもの。


「1B more than」   ― 子宮ガンと二つの難病が教えてくれたこと ―


翌日、磯崎先生から、
「昨日、キミが泣かずに居てくれて助かったよ。僕は前の日から、この事実をどうやってキミに伝えようか、ずっと言葉を選んでいたんだ。キミは初期の状態だから、手の打ちようがあるが、ここに来るのがあと三ヶ月遅かったらキミには告知出来ない状況になっていたよ」
と言われた。
告知出来ない状況……それは、手遅れ……という事だ。
はっとした。私の勤めている会社の健康診断が、丁度三ヶ月後だったのだ。何という偶然だろう。
その後、偶然の重なりによって、今後、自分の命が生かされるかもしれない可能性があるのだと知り、腰が抜けたようになった。
 
自分がガンであるという事実は何よりの恐怖であったが、「手術」というものが私には恐ろしかった。
30歳を迎える頃、私は「卵巣のう腫」という病気で手術を受けている。卵巣が大きく膨らみ、破裂する危険があると言う。診察後に即刻、卵巣の一部を切除しなければならない緊急性を、医師より告げられた。
その時もやはり、診察室から病室へと運ばれた。そして、今回の入院のときと同じ質問を繰り返し、同じ返事を聞かされた。

「命より大事なものがありますか?」

その頃の私は、筋ジストロフィーに対する知識が乏しかった。婦人科の医師に、自身が筋ジストロフィーであることを伝える必要性はないと考え、何も言わずにいた。
けれど手術の朝、何やらふと思い当たり、手術室に運ばれる直前に看護師に伝えたところ、周りは急にばたばたと慌しくなった。
何の騒ぎだろう…と他人事(ひとごと)のように思っている私のベッドに、血相を変えた医師がやって来た。
「どうしてそんなに大事なことを言わないんですか! 筋ジストロフィーの患者さんに全身麻酔は危険なんですよ!」
結局、全身麻酔の予定が、急遽「局部麻酔」に変更になった。それまでは、何の意識もないまま行われる「全身麻酔」というものを、とても安楽で簡単なものだと考えていた。
手術後、局部麻酔に変更になった事情について、詳しく説明を受ける。
筋ジストロフィーの患者は、全身麻酔をかけた際、筋肉が弛緩(しかん)して呼吸をすることが出来ずに、そのまま亡くなってしまう危険性があるという。
それ以来、私は麻酔に関してとても用心深くなった。



薔薇一輪 

by プルメリア


手術を行う、と告げられた瞬間に、磯崎先生にこのことを話した。
「私に全身麻酔は可能なのでしょうか?」
「まさか、この規模の手術で局部麻酔は無理だろう。何とか、麻酔科と相談して全身麻酔で出来るように考えてみるよ」
それは、私の期待を裏切る答えだった。
卵巣のう腫の手術を経験して以来、私にとっては、全く意識のない状態となる「全身麻酔」が恐ろしくて仕方ない。深い闇の中にただ放り込まれ、そのまま誰に気付かれることもなく永遠に一人で彷徨(さまよ)い続ける様(さま)を想像させる。その時もやはり、肉体的な痛みより精神的な痛みに弱い自分が、私の心を押し揺すった。

そんな時、父上が肺ガンを再発したという京子が言った。
「いいわよ、Natsuは。手術が出来るんだもの。うちの父は、ガンの出来た場所が悪くて手術も出来ないのよ。Natsuは可能性を残しているのよ」
その台詞は私の入院中、再三聞かされた。それはそうなのだろう。けれど、理性では理解出来ることが、いざとなると気を萎えさせる。
京子の父上は、放射線と抗ガン剤での治療を受けていると言った。

その数日後に、教授回診という仰々(ぎょうぎょう)しい行列がやってくる。そこで、初めて私の癌の進行程度…「ステージ」が、「1B more than」であると知った。
何度も看護師に尋ねた。
「1」の意味。「B」の意味。では「more than」は? と。それぞれの病院で、呼び方が違うのだと言われ、結局確かなことは分からない。
私は「1」と聞いて少しだけ、安堵した。けれど「B」には拘った。まして「more than」とは?

只の「1」だけであれば良かったのに。けれど、初期の状態であることだけは確かな様子だ。
命拾いが出来るかもしれない。
告知されるまで、ガンを意識することの無かった私だったけれど、その日を境に「早期発見」の為の検査を友人たちに強く勧めるようになった。

それは、ひたすらに、自分の可能性を信じたかったから。

- 終わり -


私は早期発見のお陰で、今もこうして図太く生きております。
そうして、筋ジストロフィーであろうが何であろうが…楽しめることは、今の内にやっておくのさぁ!と割り切っています。

人間、割り切りが必要な時もあるのです。ね ウインク きらッッ


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2009/03/24 19:51 | 病気のことCOMMENT(2)TRACKBACK(0)  TOP

コメント

奈緒様

筋ジストロフィーの検査に全身麻酔!!凄い矛盾e-351
でも、こちらを立てればあちらが立たず、あちらを立てればこちらが立たず…って事なんだろうね。
医学の進歩も重要だけど、私が問題だと思うのは、「正確な情報」。全身麻酔のことも、もっと早く教えてくれよーe-263と思ったもの。生死に関わる事なのにね。

No:642 2009/03/25 22:12 | Natsu #- URL [ 編集 ]

Re: 8年前の春 - 命拾い - 

確かに全身麻酔きけんなんだよね。
というわりに、私、3歳のときに筋ジスか検査するのに全身麻酔したらしいんだけど 苦笑
18歳くらいのときに主治医に全身麻酔はきけん!!っていわれたよ。

No:641 2009/03/25 21:09 | 奈緒 #- URL編集 ]

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