8年前の春 - 告知 - 

8年前に起きたこの突然の出来事は、その年の3月12日から6月19日まで続きます。
子宮癌が完治した今でも…この気温、春の花、暖かな風…そんなものを感じると、どうしても思い出してしまいます。
そうして、浸ってしまうのです 涙
私のセンチメンタルに、もう少しだけ…お付き合い下さいませ。

あ! 癌は早期発見 ですよ!これだけは間違いありません。

定期健診、受けて下さいね。面倒がらずにね ウインク ハート
昨日の「闘病記」の続きです。


「1B more than」    ― 子宮ガンと二つの難病が教えてくれたこと ―


主治医との面談の前に、父と弟の三人で病棟のカフェテリアに行った。そこは、既に新築された、近代的で一流ホテルのような病棟の8階にある。
建て替え中の古びた病棟から、長い長い渡り廊下を歩いてカフェに向かった。三人ともずっと黙っていた。
カフェのテーブルに着くと、雨に煙る目の前の東京タワーは、今度は無機質な印象を私に与える。
弟が言う。
「何があっても、何を言われても、絶対に泣くなよ! それだけは約束してくれ」
私はただ、
「うん」
と、とだけ答えた。

病室に戻る。いよいよ看護師に呼ばれる。
ナナちゃんが私に付き添ってくれる。ナースステーションを訪ねた。

特に個別の部屋に案内されるでもない。
薬や様々な種類の器具が雑然と置かれた、医者と看護師たちのバタバタと行き交う賑やかしいナースステーションだ。そのまま、目の前の小さな丸い椅子で説明を聞くように言われた。
私はいよいよ安堵した。
「なあんだ。本当に何でもないんだわ。こんな場所で聞く話だもの」
磯崎先生の様子に変わりはない。目の前には、先日撮ったMRIの画像が冴え冴えとした蛍光灯の光に映し出されている。自分の子宮であろうその様々な形は、私には抽象画のように見えた。美しいと思った。

医師の説明は、くどくどと続いた。同じ説明を何度も聞かされているような気がして、飽きてしまった私は、無邪気に尋ねた。
「先生、ハッキリ仰って下さい。先ず、病名は何ですか?」
「子宮ガンです」

…………………。

その一瞬、思考が停止した。冷たい手で、心臓を掴(つか)まれたかのように動顛した。雷に打たれたように、身体が動かない。
父はその時、くるりと椅子を一回転させ、ふぁーあ…と欠伸(あくび)をした。
弟は、只ひたすらにメモを取り続けていた。
私がガン? そんなこと、あってはならない。
次の瞬間、私はこの世の中の全てを否定した。この現実の世の中も、今、生きている事実さえも。
泣くな、と言われているので泣きはしない。唇をぎゅっと真一文字にして、奥歯を噛み締め、ひたすらに「その時」が過ぎるのを耐えた。その後も、医師はひたすらに説明を続けていたが、言葉は全く耳に入らず、瞼は涙で滲(にじ)んでくる。
一通りの長い長い説明がようやく終わり、ナースステーションを出た瞬間、堪(こら)えていた涙が溢れ出た。あろうはずのない出来事が、今、私の身に起きている。
今さっき耳にした「子宮ガン」という響きばかりが心を締め付け、けれどその事実を受け入れることも出来ずに、ひたすら涙が溢れ出る。その涙で視界は遮られ、何も見えない。父と弟と、ナナちゃんに支えられ、やっと私は自分のベッドに戻った。

病室に戻ると、見舞いの友人が、私を待っていた。彼女は私を見て泣きだした。私の気配から何かを感じ取ったのだろう。病名を彼女に告げ、その後、頭の芯がぼぉっとするまで、朦朧(もうろう)として何の感情も自覚出来なくなるまで泣き続けた。
弟は、「これから仕事があるから」と先に帰った。



夕焼け



面会時間ギリギリまで付き添ってくれた父は、帰り際、私に
「良かったなぁ、ガンじゃなくて」
と言った。
私は今度は、経験のない感情に打ちのめされる。
「何を言っているの? さっき磯崎先生からはっきりと、『子宮ガンです』と告げられたじゃないの」
けれど、父は、
「何かの間違いだろう。聞き間違えだよ」
と、穏やかに微笑みながら帰って行った。
私はなんという親不孝な娘なのだろう。70歳を過ぎようかという父親に、こんな心配をかけるなんて。
又、涙がこぼれ落ちた。

- 続く -


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2009/03/23 18:35 | 病気のことCOMMENT(2)TRACKBACK(0)  TOP

コメント

daria様

有難う。そう、dariaさんに言われて今、気付いたけど…父は「戦友」なんだね。一方が闘っている時は応援し、援護する。その立場が逆転することは、しばしばあった。
だから、父の生きている内に退院もさせたかったし、ラーメンも一緒に食べた。後は、南の島だけだねe-255
そして…私の分の旅費を、どうやって父に出させるかだねe-264(←自分で書いてて、吹き出した~^^;)

No:640 2009/03/25 02:06 | Natsu #- URL編集 ]

Re: 8年前の春 - 告知 - 

ずっとここで読んできたお父さん、さらにわかった気にさせられたなぁ。
ありがたいな。お父さん、大事にしてあげてや。

No:639 2009/03/25 00:39 | daria #- URL編集 ]

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