呪縛

解放感。身も心も、ほどけていく。
こんな安堵の思いは、暫くぶりだと…思う。

「健全な魂は健全な肉体に宿る」

昔から言われている言葉だけれど、その意味を実感する。




2月9日に開腹手術を控えていた。今年に入り、そのために検査を重ねる日々。
「憂鬱」が私の心を覆ってしまって、1月も半ばを過ぎる頃には毎日を無為に過ごすようになっていた。

何もする気が起きなくて。ただ、ぼんやりとPCの画面を見つめている。
食事をすることさえ。眠ることさえ忘れてしまって、ただ、椅子に座っている。


それは、手術が恐い…というだけの理由ではなくて。
去年の12月末から感じる右足の痺れ。足に力が入らない。そのことが、車椅子への依存度を高くした。家の中でさえ、右腿に走る強い痛みで歩くことが困難になる。

このまま…。入院をして、お腹を切れば、いよいよ歩くことが出来なくなってしまう。筋力の衰えを自覚していた、ここ最近だから。
入院が長引けば、健康な人でも歩きにくくなるのだもの。だとしたら、私は尚更のこと。

今、思えば。
馬鹿げている。妄想に近い考えなのだと、分かるのだけど。

けれど、私は真剣だった。
負のスパイラルは加速を早める。


いよいよ手術前の主治医との面談の日。
先生は仰った。

「エコーとMRIの検査の結果、今回は石(胆石)が映らなかったんですよ」

一瞬、言葉の意味を理解できずにいた。
13mmと言われた胆石が、MRIにも…エコーの画像にも映っていないだなんて。
へなへなと腰が抜けたような脱力感。 そんなことって…あるんだぁ…。

「ところで、2月9日の手術はどうされますか?」

この質問に、再度、私は驚いた。
こんな状況でも手術はするの?お腹を開けて、石はありませんね、では閉じましょう…と、そういうこと?

少しだけ考えて、私は丁重にお断りをした。

先生は「今、キャンセルをすると、一ヶ月先の手術室は取れませんよ。緊急時、以外は」と、言葉を続ける。
けれどね。「お願いします」と言う方が、物凄く勇気がいると思うわ。

結局、胆石であることは確実らしいのだけれど。
あくまでも、「今回の検査」で「石は確認できなかった」とのこと。

今後は、三ヵ月に一度のエコー検査を受けながら、経過観察ということになった。

隣りで聞いていた夫も、しばらく唖然としていたけれど、診察室を出た瞬間に二人で笑いあった。

「ね、手術室、キャンセルしても良かったよね?」
「うん、いいでしょう。石が画像で確認できてからでも」



この瞬間、私は「呪縛」から解かれた。

「健全な魂は健全な肉体に宿る」のだ。

これまでの人生で「最悪」に近かった2010年を一度、断ち切りたい。
その願いを神様がきいて下さったような気がした。心から湧きおこる、感謝の気持ち。


いよいよ画像に「石」が映ったその時には…。
今度こそ、泣きごとを言わずに手術室を予約することにします





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2011/01/31 16:00 | 胆石COMMENT(20)TRACKBACK(0)  TOP

胃カメラ 検査

車椅子から、ゆっくりとストレッチャーへ移動する。

口の奥は、麻酔のゼリーで痺れている。

壁に背を向けて横になるように、姿勢の向きを指示される。その時はもう、看護師の問いかけに、まともに返事をすることが出来なくなっていた。

「麻酔を打ちますからね。左手のシャツを肘までまくって下さいね」

看護師の言う「麻酔」とは、事前に説明のあった「鎮静剤」のこと。これは他の医療機関でも、そうするのだろうか。「鎮静剤」は…心の動揺を鎮めるためのもの。

過去に一度、私は極度の閉所恐怖症のためにMRIに入ることが出来なくて…打たれた経験がある。あんなに恐ろしかったMRIの機械なのに。血管から薬が流れると同時に、恐怖心が消えていく。それは、本当に呆気ないほどに。
あの瞬間を思い出す。

20代後半と思われる、肩までの黒髪をセンターパーツにした医師が現れた。整った目鼻立ち。医者に美貌は必要なのだろうか…と、ぼんやりした頭で考える。
「こんにちは」と一言だけ言葉を交わす。本当はもっと色々と質問をしたかったけれど、喋ることが出来ない。注射の腕は良かった。痛みをほとんど感じることなく、意識だけがぼやけていく。

不意に口に筒のような物をはめられる。そうよね。これが無ければ、先生の手を噛んでしまうわ。
キシロカインゼリーのお陰で、喉の奥に違和感は感じない。けれど、カメラが胃に出し入れされる感覚はハッキリと分かる。何度もウエッと吐き出しそうになって、涙が頬を伝う。(これは感情の涙ではなく、生理的なもの)

いよいよ胃への違和感が負担になってきた頃、検査は終了したらしい。「らしい」というのは、鎮静剤の効果。

医師は、「終わりです」とだけ言って居なくなった。私は棒のように横になっているだけ。

終わった。「死んだ方がマシ」とまで思っていた、あの胃カメラが…終わった。
全身から力が抜けていくようだった。

ブルーのエプロンを付けた看護師がやってくる。

「このまま、30分、横になって休んでいて下さいね」

それは、そうよね。凄く大変な施術をしたような気がするもの…。
はじめは、病人気分で横になっていた。グッタリと。力なく。けれど、その内、異変が起きる。

お腹が痛い…。

昨夜の8時から絶飲絶食で検査を受けているのだから、お腹が痛くなるはずがない。気のせいだと思うことにしよう…としたけれど、我慢には限界があった。

「すみません!」

自分でも驚くほどハッキリとした声で、看護師に声をかける。

30分、経っていないのに、すっかり私は覚醒していた。

主人を呼んで貰って車椅子に移り、一目散にトイレ へ。
ここで一気に我に帰る。

「あの、お腹の泡を取るお薬って…お腹を壊す原因になりますか?」

そう看護師に尋ねてみた。

「いいえ。検査の時に、胃に空気を入れているんです。そのせいでガスが溜ってしまうことがありますので、我慢しないで出して下さいね」

やっぱり、優しく微笑まれたけれど…私のお腹の状態は微笑んでいられる状態ではなくなった

今回の検査で一番辛かったのは、胃に入ったガス抜き作業だったわ


★‥∵:*:☆*゚★。::*☆‥∵:*:☆*゚★。::*☆‥∵:*:☆*゚★::*☆‥∵:*:☆*゚★


今回、私にとっては辛い検査だったけれど、これは…あくまで「私の場合」です。
それが証拠に、私のベッドの両隣りの人は…

「検査はもう、終わりましたよ!起きて下さい!分かりますか~」

と、看護師に声をかけられていましたから。

私はそれを聞いた時、世の中には呑気な人もいたものだなぁと思ったのですけれど

お友達に、私と全く同じ体験をした人が居ます。
彼女も鎮静剤の効きが悪かったのだと言いました。たぶん、私たちは特殊な例だと思います。
(麻酔が効きにくい体質なのです)

皆さんは、安心して検査を受けて下さいね



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2011/01/21 21:00 | 胃カメラCOMMENT(10)TRACKBACK(0)  TOP

胃カメラ 受付

15日の胃カメラ、検査当日。

心を平静に保つことを心掛け…大学病院の「内視鏡」カウンターに向かう。

普段、通い慣れた2F。そのエレベーター右奥の脇の道。
これまで、どうして足を踏み入れなかったのだろう。

中を覗いてはいけない気がした。
その道は閑散としていて、余り人が通るのを見掛けなかった。

奥に奥に、入っていく。長い廊下が続き、ゆっくりと前方確認しながら進んでいくと、いきなり視界が開けた。

そこには見たこともない、秘密基地のようなセンターが存在する。

透明なブルーなエプロンと。顔じゅうを覆う大きなマスクをつけた看護師たちが、忙しなく行き来している。

幾つものカーテンに仕切られたストレッチャーと、青い閃光を放つ機械。それらのものが、何を意味するものか、私には勇気がなくて聞くことが出来なかった。

天井からは「リカバリー」と書かれた札で、いくつも部屋が仕切られている。

印象的だった。「リカバリーねぇ…」
多分…。その言葉が、この空間の印象を決定付けた。

「意外にね、胃カメラは楽だって聞くよ
「今の機械は凄いみたいよ。ちっとも苦しくないんですって

皆、皆、優しいね

けれど、その優しさは…「残酷な沈黙」(山路さん、拝借します)だと知ることになる。
皆、知っているけれど、敢えて言わないだけなのよね…。


驚いたのは、その、看護師の身体を覆うほどのエプロンを着用している理由。
付き添っていた夫が、ふと尋ねた。

「何のために、そんな大きなエプロンを着けているんですか?」

一瞬の沈黙の後、言い難そうに看護師は答える。

「はい…。それは、まぁ…。色々と飛び散るものがありますので…」

え?飛び散るもの?………。それ以上は、想像をするのを止めることにした。



待つこと30分近く…。

「お腹の泡を取るお薬です」と、水のような紙コップを…手渡される。
昨夜から、絶飲絶食だったので、ここで水分を口に出来るなら何でも良い…。一気に飲んでしまう。

次に「喉に麻酔をします 」と仰って…。
ゲ!その注射針を喉に射すのー …と焦っていたら、それは「キシロカインゼリー」でした。飲む麻酔薬。
(これまで、キシロカインゼリーは、皮膚に塗る経験しかなかった)

これまで一度も「効いた」と思ったことは無いけれど、口内だと強烈に効き目を発揮する。

だんだんと口が痺れて話すことが出来なくなった頃…優しく微笑む看護師から


「どうぞ。ストレッチャーに移りましょう」と声が掛かる。


私はもう、覚悟を決めた。


- 続 -




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2011/01/17 02:20 | 胃カメラCOMMENT(4)TRACKBACK(0)  TOP

ドキドキ

明日は、いよいよ胃カメラの検査の日。

もう随分と昔。
目にしたこともない、胃カメラを飲みこむ夢を見た。

イメージだけの胃カメラは、人の頭ほどの大きさもあって………。

それ以来、「胃カメラを飲むくらいなら、死んだ方がマシ」だと本気で思っていた。



sue 病院

PHOTO ST  by sue


そんな私に、「その日」が来るなんて。

ああん、もう。往生際が悪過ぎる。

大丈夫、大丈夫。
気付いたら…きっと、明日になっていて。

気付いたら…きっと、検査は、終わっている…はず。

医学は進歩した!って聞くものね!
この歳になっても…経験は大事…だと考えることにしておこう




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2011/01/14 21:36 | 胃カメラCOMMENT(10)TRACKBACK(0)  TOP

焦燥感

この年末に、再び、やってしまった「肉離れ」
私は全く理解していなかった。肉離れが、クセになるのだということを。
指摘されれば、理屈は分かる。

一度もろくなった筋肉は、次に何かの刺激があると…同じ場所が壊れやすくなってしまうのだと言う。

今、ひどく逼迫した状況にある。
私の肉離れは右大腿部に炎症を起こしているため、ひどい痛みで車の運転が出来なくなってしまった。

どうして、アクセルは右側に付いているのかしら

これまで、足の筋力低下に関しては、車の運転が出来るならばどうにかなると考えてきた。
それが、今回のことで、決定的なダメージとなる。

3日の宝塚観劇も。
本当なら、私一人で颯爽と…。首都高を飛ばして日比谷までドライブのつもりでいたのに。

けれど、前日。既に肉離れを起こしていた私は危険を察知する。
いざ、都心でアクセルを踏めなかったらどうするの?考えたくもない恐ろしいこと…。
家の周りを何周か回ってみる。その夜に来た…。激しい痛み。
当たり前よね。私は足首の筋力が弱くて、殆ど、腿の力で運転しているんだもの。

結果、運転は断念した。

…という訳で、お正月休み最後の一日、夫は貴重な休日を…私のために使わなければならなくなった。
車での送り迎え。
劇場ではお友達が付き添ってくれる。本当に…何から何までお世話をかけますわ

家の中での移動も困難。入浴も困難。立っていることも難しい。
足に妙な力が入るので、身体が全体がバリバリに…。

今…。
骨折をしている訳ではないけれど、これで一生歩けなくなったらどうしよう!と思うと暗い不安の影に押し潰されてしまいそう。
ただ、立っているだけなのに、足がしびれて歩けなくなる。
何か取り返しのつかないことをしてしまったのかな…という不安。

こんな絶対安静と思われる時期に、2月の手術に向けての検査が幾つか入る。
それも、全て一人で出掛ける予定にしていた。

けれど、運転が出来ないのでは…どうすれば良い?
ここは東京都心から一時間ほど。タクシーで、高速を使って帰るには…ちょっと勇気が要るわ。


…と、物凄く逼迫していたら。
「com-pass」共同代表の奈緒が「参考にしてね」と、自分のblogの体験記をピックアップしたメールを送ってくれて…

本当に泣けてくる。有難う。
こういう時に必要なのは、慰めの言葉でも、優しいだけの言葉でもなくて。

自分の体験を話してくれること。しみじみと伝わって、本当に奈緒の気持ちに感謝した。励まされて、心強い。

今の自分の身体の状況を考えると、いつになったら運転が出来るようになるのか分からないから。
だからこそ。奈緒の言うように「簡易電動車椅子&電車」という移動手段を、これからの外出に考えるべき時が来たのだと思う。

「今」という時期を乗り切らなくちゃ。
2月の手術を前に、検査と診察での病院通いは避けられない。

頑張らなくちゃ、ね。私




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2011/01/07 23:45 | 病気のことCOMMENT(13)TRACKBACK(0)  TOP

「誰がために鐘は鳴る」 - In TAKARAZUKA -

お正月の3日。お友達に誘われて、今年、初めての宝塚 観劇へ。

宙組、新春公演は「誰がために鐘は鳴る」(原作/アーネスト・ヘミングウェイ)

この作品、確か…鳳蘭と遥くらら主演で観たことがある。タイトルを聞いて、瞬時に記憶が甦る。
プログラムによれば、1978年8月のことだそう。私が中学生の時の話。

明るく愉快なストーリーでは無かった記憶があったので、積極的に観たい!とは思わなかったのだけれど、せっかくのお誘いだもの。
そして、何より魅惑的なのは…その座席だった。

最前列、センター席

本物の芝居好きは、最前列は好まない。舞台全体を見渡すことの出来る、一階中央辺りか、二階の最前列を希望するもの。けれど、宝塚だけは違うのよ。

最前列のセンターは…

この席は、夢の世界への一番の近道。スターさんに一番近い席だから。
衣装のスパンコールに反射した光が溢れてこぼれ落ちてくる。

幕があがる。同時に煙るドライアイス。客席に、どうらんと香水の混ざった、独特の香りが降りてくる。


これはスペインのお話なのだけど、私は幕が上がる直前まで…何故だか「ロシア」のお話だと信じていた。
この記憶の刷り込みのいい加減さ

台本が柴田侑宏先生というだけあって、台詞が耳に馴染んで心地よい。一本物というと飽きるかなと思っていたけれど、それは杞憂だった。
頭にすんなりと入ってくる台詞と、トップスター 大空祐飛の大きく包み込むような演技力で、観客を引っ張っていく。
この公演が、トップお披露目から三作品目だというのに、備わった風格は大したものだと感心する。

同時に、つくづく「宝塚」というところは、観客が育てていくものなのだと実感した。
二番手の時の大空祐飛からは、「国際義勇軍」の兵士をここまでロマンティックに演じることが出来るとは想像出来なかったから。

ただ、若手が皆「平均値」であったことを残念に思う。
もっともっと、個性的であれば良いのに。全てが上手ではなくて良いのだから。花組 トップ時代の真矢みきがそうであったように。

三時間は、夢のように過ぎる。

お正月と宝塚

華やかな、一年の始まりになった。



追記:この公演は、専科 星原美沙緒の退団公演となります。「グアダマーラ山中でゲリラの一隊を率いているリーダー」として、話を盛り上げる。一本物なので、そのままフィナーレへ。
最後は、大階段を降りて皆様にご挨拶。 やっぱり、宝塚はこうでなくちゃ…ね




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2011/01/05 02:00 | 映画・舞台のことCOMMENT(6)TRACKBACK(0)  TOP

2011年1月2日

新しい年が明けました。

今年は、時間にゆとりを持って過ごしたいと思います。


昨年は…とにかく、せわしなく…いつも何かに追われているような状態でした。
そんな状況を生み出しているのは、私自身。



うさぎ

PHOTO ST  by Motoko Alexander


「追われる」生活ではなくて「楽しみたい」

自分の内側から溢れる感情を大切にしたいと思います。



2011年が、皆様にとりまして笑顔の多い一年でありますように。

本年も宜しくお願い致します




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2011/01/02 17:56 | ご挨拶COMMENT(22)TRACKBACK(0)  TOP

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