破片

昨日は退院以来、初めての外来受診日だった。

弟に付き添いを頼み、自宅に迎えに来てもらう。
中央道から首都高へ入る。平日の午前中にしては、考えられないほどに車は流れている。

あの地震が起きた日から、外に出るのは今日が初めてだ。

霞が関は、不気味に思えるほどガランとしている。
あれほどの「人」と「車」は、どこへ消えてしまったのだろう。

非常事態…を街全体で物語っていた。

普段は人で溢れかえる大学病院も、拍子抜けするくらいに空間が目立つ。
三科受診は、午後の早い時間に会計まで進んだ。

これまで、ずっと気掛かりだった「父のマンション」。
あの地震で一体、どうなっているのだろう。何より、母の仏壇が気になって仕方がない。

病院の帰り道。
弟と二人。心の準備は要ったけれど、父のマンションの鍵を開けた。


目の前に広がる光景に、言葉を失う。

「ここ、東京だよね…」

「靴!脱いじゃ駄目よ!ガラスの破片を踏むわよ!」

キッチンの、棚という棚から食器類が落下していた。
冷蔵庫と食器棚は、私の記憶とは違う位置に移動をしていたし、リビングのTVは床に転がっている。
本棚に整然と並べたはずの画集は、その重みで床にバラバラと倒れていた。

「あーあー…」

弟の大袈裟な溜め息が、父の寝室から聞こえてくる。

「どうする?見る?見ちゃう?」

そこまで言われれば…。そりゃ、この目で見たいさ。
父の部屋に入った瞬間、目を疑った。

32インチのTVが床に落ちている。それは、まだ。
父が元気でいた頃に、夫が「父の日のプレゼント」  として贈ったTVだった。


TV_20110319031155.jpg



こんな無残な姿に…
元の位置に戻してはみてはみたけれど、液晶画面にヒビが入り、音声を出すだけの機械に姿を変えていた。

ベッドの下の引き出しも、開いてしまったよう。



部屋1



都内のマンションで、こんなことが起きていたとは…。
もし父が一人、この家のキッチンに立っていたとしたら…。

食器の破片の散乱する中で、今は穏やかに静養している父を思う。

人間、知らなくても良いこともあるのよ。
恐い思いをしなくて済んだね。

今、父の入院する病院では余り揺れなかったというから。


乱れたお仏壇を整えて、「大都市停電予告」に備えてマンションを後にする。

その後、私たち姉弟は「ファミレス難民」になるのだけど…。
18時過ぎのファミリーレストランは、どこも照明が落ちていた。

三軒目。白いお米だけが食べたくて。やっと口にした時には…素直に感謝した。

この異常事態。非日常。
私たちの「対応力」が求められていることを痛感する。


今の私は「入院」のせいで、家の中の歩行もままならない。
一日も早く。「一歩」でも「二歩」でも歩くことが出来ますように。

今なら、頑張ることが出来る。

「日本」という国が一生懸命になっている時だからこそ。

ステロイドの治療も、後…三ヵ月。
「日本」と一緒に頑張ろう。

国も私も。復興への道。





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2011/03/18 23:30 | 東北地方太平洋沖地震COMMENT(10)TRACKBACK(0)  TOP

「探しています」

あの地震が起きた日の記録以降…私に何が出来るのか。

そればかりを思い、言葉にすることが出来ませんでした。痛ましい現実に胸が詰まります。

そんな今日。
お友達のペタコさんが、ご自身の blog記事を、「なっちゃんのところでもどうぞ」と言ってくれました。


「ぺたこの毎日」

たくさんの行方不明者、避難所に張り出された名簿を
携帯電話に写して張り出し、誰でも見られるサービスが開始されました。
グーグルのピカサで見ることが出来ます。
たくさんの名簿がすでに張り出されています。

東北に知り合いがいて連絡が取れず探していらっしゃる方、
避難所にいて遠くの知り合いに自分の安否を知らせたい方、
ぜひこのピカサを活用してお互いを確認してください。


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「com-pass 女性筋疾患患者の会」の会員の方、東北地方にお住まいの会員さん…。
今、この場で安否など知り得る術もなく…。ただ、ひたすらに案じています。

関東圏では、「計画停電」が開始されました。
人口呼吸器の使用もあり得る私たちの疾患で…。一体、どう、この局面を乗り切れというのでしょう。

こちらの情報に関しては…世田谷区議会議員。上川あやさんより。

「ご自宅で人工呼吸器を利用する方へ、計画停電の際の相談先として、国立病院機構などが運営する主に関東信越地区の医療機関における緊急相談窓口をリストアップしましたのでお知らせします」


「厚生労働省」 - 人工呼吸器を利用する在宅医療患者の緊急相談窓口の設置について -


「 http://bit.ly/dMZmWI」



今、私に出来ること。
「人の迷惑にならないこと」。未だ、ステロイド服薬治療中の身です。
せめて、自分の身体のことで病院に運ばれることのないように。今、気を引き締めて自宅療養をしています。


今回の災害に遭われました方、皆様に心よりお見舞い申し上げます。




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2011/03/16 21:36 | 東北地方太平洋沖地震COMMENT(2)TRACKBACK(0)  TOP

震度6 - その日の記録 -

14:46 地震発生時。

その時、私は二階の部屋でPCに向かっていた。

ゆらゆらとした不思議な感覚を身体に感じる。
身体全体が、地面に引きこまれていくような「磁力」。

その瞬間、部屋は揺れ始めた。
前面に倒れこれんでくるPCを右手で押さえながら、私は後ろの壁にある本棚を凝視していた。

部屋のドアが揺れている。
石油ファンヒーターは、大きく揺れると「自動停止」となる。

長かった。この感覚が身体から抜けることはないと思う。そうだ、船酔いの感覚なのだ。

…治まった。ああ、驚いた。まるで電車かバスに乗っているようだった。
そうだ、ニュースを見てみよう。

そして、TVのある隣りの部屋に移った。

家の外では「大変なこと」が起きているらしい。

と、思った瞬間にTVキャスターが叫んだ。

「縦揺れです!縦揺れです!落ち着いて行動して下さい!」


「この時」が、ついに来たのだと思った。生まれて初めて経験する「縦揺れ」
けれど、それは程なく治まった。…その後。私は右手でテーブルに掴まりながら、振動に耐えていた。

長く長く感じる揺れ。最初に感じた揺れよりも、二回目の余震が過ぎた頃から心臓がドキドキし始める。
何が起きているのか。恐くて一人では階下には降りられずにいた。


一人、携帯のボタンを押し続ける。
何度押しても繋がらない。メールも駄目、通話も駄目、Twitter にも繋がらない。

では、私はこの部屋に一人?

そんな不安に押し潰されそうな頃、インターホンがなった。
見ると、夫の両親の顔が映っている。
私はようやく安堵して、子供のように泣いてしまいそうになった。


16:45  お互いの無事を確認した頃。ようやく「5件」のメール着信を知らせる音が響いた。

夫からのものだった。
 「無事ですか?返信下さい」

その他は友人たちからの、安否を問うメールだ。腰から力が抜けていく。


夕方を過ぎて、余震の続く中、夫がやっと帰宅した。
お互いの無事を確認をして、悲惨な現状が映し出されるTVの画面を見つめる。

けれど、夫は会社に残った「同僚」のことが気になって仕方ない。

「会社に電話をしてみたら?家で心配しているよりも、ずっと気が楽になると思うよ」

すると、夫は会社に戻ると言い始めた。
交通機関が一切断たれた状況で、会社に留まっている同僚を送っていくつもりらしい。
うん、私もそれが良いと思う。ここで、ただ心配しているよりも。


19:00 夫が家を出る。

19:36 「エリアメール」 けたたましい携帯の音が鳴り響く。

「緊急地震速報 福島県沖で地震発生。強い揺れに備えて下さい(気象庁)」

同時に、TV画面では「安藤優子」が叫ぶ。
「今、これから強い地震が来ます。すぐに机の下にもぐって下さい!」

ヨロヨロと机の下にもぐりこむ。…先客がいた。
ショコラとコナちゃん。
そうね、こういう時にお手本にするべきはアナタ達だと思う。

けれど。
この一件が、私を逼迫させた。手元にある携帯は、殆どと言っていいほど使い物にはならない。
TVだけが情報源であるというのに、映し出される映像は悲惨なものばかり。惨状を思い、被害に遭った方を想うと不安ばかりが募って動揺する。

19:00に家を出た夫は、23:00になってもまだ、戻らない。心配と不安が押さえられなくなった私は、とうとう彼の勤務先に電話をした。
事故にさえ遭っていなければ…。夫の様子を知りたいだけの電話だった。


「彼は、同僚を車で送りに行ってくれました。道路が停電で、手信号などの事情もあって…渋滞しているのかもしれません。助かっています」

夫の上司のその言葉を聞いて、それまでの不安は一度に消えた。
無事ならば良い…ただ待てば良いのだから。

その電話をしている時に、明るい声が玄関から響いた。

「ただいまー」

夫の留守中は、度重なる余震と、TVの映像に身の震える思いでいた。
まんじりともせず、リビングに一人、携帯を握りしめていた。
声を聞いて、身体の力が抜けていく。

聞けば、「道路の信号はところどころが停電していて、その機能を失っていた。代わりに、警察官の手信号に従ったんだよ」…と。

想像を遥かに超えた非常事態の夜になった。



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地震発生と同時に流れる壊滅的な映像。目にする度に胸が痛みます。
未だに、現実に起きたことだとは信じられない思いです。

被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。
一人でも多くの命が救われますように…。




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2011/03/12 08:00 | 東北地方太平洋沖地震COMMENT(10)TRACKBACK(0)  TOP

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