胃カメラ 検査

車椅子から、ゆっくりとストレッチャーへ移動する。

口の奥は、麻酔のゼリーで痺れている。

壁に背を向けて横になるように、姿勢の向きを指示される。その時はもう、看護師の問いかけに、まともに返事をすることが出来なくなっていた。

「麻酔を打ちますからね。左手のシャツを肘までまくって下さいね」

看護師の言う「麻酔」とは、事前に説明のあった「鎮静剤」のこと。これは他の医療機関でも、そうするのだろうか。「鎮静剤」は…心の動揺を鎮めるためのもの。

過去に一度、私は極度の閉所恐怖症のためにMRIに入ることが出来なくて…打たれた経験がある。あんなに恐ろしかったMRIの機械なのに。血管から薬が流れると同時に、恐怖心が消えていく。それは、本当に呆気ないほどに。
あの瞬間を思い出す。

20代後半と思われる、肩までの黒髪をセンターパーツにした医師が現れた。整った目鼻立ち。医者に美貌は必要なのだろうか…と、ぼんやりした頭で考える。
「こんにちは」と一言だけ言葉を交わす。本当はもっと色々と質問をしたかったけれど、喋ることが出来ない。注射の腕は良かった。痛みをほとんど感じることなく、意識だけがぼやけていく。

不意に口に筒のような物をはめられる。そうよね。これが無ければ、先生の手を噛んでしまうわ。
キシロカインゼリーのお陰で、喉の奥に違和感は感じない。けれど、カメラが胃に出し入れされる感覚はハッキリと分かる。何度もウエッと吐き出しそうになって、涙が頬を伝う。(これは感情の涙ではなく、生理的なもの)

いよいよ胃への違和感が負担になってきた頃、検査は終了したらしい。「らしい」というのは、鎮静剤の効果。

医師は、「終わりです」とだけ言って居なくなった。私は棒のように横になっているだけ。

終わった。「死んだ方がマシ」とまで思っていた、あの胃カメラが…終わった。
全身から力が抜けていくようだった。

ブルーのエプロンを付けた看護師がやってくる。

「このまま、30分、横になって休んでいて下さいね」

それは、そうよね。凄く大変な施術をしたような気がするもの…。
はじめは、病人気分で横になっていた。グッタリと。力なく。けれど、その内、異変が起きる。

お腹が痛い…。

昨夜の8時から絶飲絶食で検査を受けているのだから、お腹が痛くなるはずがない。気のせいだと思うことにしよう…としたけれど、我慢には限界があった。

「すみません!」

自分でも驚くほどハッキリとした声で、看護師に声をかける。

30分、経っていないのに、すっかり私は覚醒していた。

主人を呼んで貰って車椅子に移り、一目散にトイレ へ。
ここで一気に我に帰る。

「あの、お腹の泡を取るお薬って…お腹を壊す原因になりますか?」

そう看護師に尋ねてみた。

「いいえ。検査の時に、胃に空気を入れているんです。そのせいでガスが溜ってしまうことがありますので、我慢しないで出して下さいね」

やっぱり、優しく微笑まれたけれど…私のお腹の状態は微笑んでいられる状態ではなくなった

今回の検査で一番辛かったのは、胃に入ったガス抜き作業だったわ


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今回、私にとっては辛い検査だったけれど、これは…あくまで「私の場合」です。
それが証拠に、私のベッドの両隣りの人は…

「検査はもう、終わりましたよ!起きて下さい!分かりますか~」

と、看護師に声をかけられていましたから。

私はそれを聞いた時、世の中には呑気な人もいたものだなぁと思ったのですけれど

お友達に、私と全く同じ体験をした人が居ます。
彼女も鎮静剤の効きが悪かったのだと言いました。たぶん、私たちは特殊な例だと思います。
(麻酔が効きにくい体質なのです)

皆さんは、安心して検査を受けて下さいね



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2011/01/21 21:00 | 胃カメラCOMMENT(10)TRACKBACK(0)  TOP

胃カメラ 受付

15日の胃カメラ、検査当日。

心を平静に保つことを心掛け…大学病院の「内視鏡」カウンターに向かう。

普段、通い慣れた2F。そのエレベーター右奥の脇の道。
これまで、どうして足を踏み入れなかったのだろう。

中を覗いてはいけない気がした。
その道は閑散としていて、余り人が通るのを見掛けなかった。

奥に奥に、入っていく。長い廊下が続き、ゆっくりと前方確認しながら進んでいくと、いきなり視界が開けた。

そこには見たこともない、秘密基地のようなセンターが存在する。

透明なブルーなエプロンと。顔じゅうを覆う大きなマスクをつけた看護師たちが、忙しなく行き来している。

幾つものカーテンに仕切られたストレッチャーと、青い閃光を放つ機械。それらのものが、何を意味するものか、私には勇気がなくて聞くことが出来なかった。

天井からは「リカバリー」と書かれた札で、いくつも部屋が仕切られている。

印象的だった。「リカバリーねぇ…」
多分…。その言葉が、この空間の印象を決定付けた。

「意外にね、胃カメラは楽だって聞くよ
「今の機械は凄いみたいよ。ちっとも苦しくないんですって

皆、皆、優しいね

けれど、その優しさは…「残酷な沈黙」(山路さん、拝借します)だと知ることになる。
皆、知っているけれど、敢えて言わないだけなのよね…。


驚いたのは、その、看護師の身体を覆うほどのエプロンを着用している理由。
付き添っていた夫が、ふと尋ねた。

「何のために、そんな大きなエプロンを着けているんですか?」

一瞬の沈黙の後、言い難そうに看護師は答える。

「はい…。それは、まぁ…。色々と飛び散るものがありますので…」

え?飛び散るもの?………。それ以上は、想像をするのを止めることにした。



待つこと30分近く…。

「お腹の泡を取るお薬です」と、水のような紙コップを…手渡される。
昨夜から、絶飲絶食だったので、ここで水分を口に出来るなら何でも良い…。一気に飲んでしまう。

次に「喉に麻酔をします 」と仰って…。
ゲ!その注射針を喉に射すのー …と焦っていたら、それは「キシロカインゼリー」でした。飲む麻酔薬。
(これまで、キシロカインゼリーは、皮膚に塗る経験しかなかった)

これまで一度も「効いた」と思ったことは無いけれど、口内だと強烈に効き目を発揮する。

だんだんと口が痺れて話すことが出来なくなった頃…優しく微笑む看護師から


「どうぞ。ストレッチャーに移りましょう」と声が掛かる。


私はもう、覚悟を決めた。


- 続 -




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2011/01/17 02:20 | 胃カメラCOMMENT(4)TRACKBACK(0)  TOP

ドキドキ

明日は、いよいよ胃カメラの検査の日。

もう随分と昔。
目にしたこともない、胃カメラを飲みこむ夢を見た。

イメージだけの胃カメラは、人の頭ほどの大きさもあって………。

それ以来、「胃カメラを飲むくらいなら、死んだ方がマシ」だと本気で思っていた。



sue 病院

PHOTO ST  by sue


そんな私に、「その日」が来るなんて。

ああん、もう。往生際が悪過ぎる。

大丈夫、大丈夫。
気付いたら…きっと、明日になっていて。

気付いたら…きっと、検査は、終わっている…はず。

医学は進歩した!って聞くものね!
この歳になっても…経験は大事…だと考えることにしておこう




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2011/01/14 21:36 | 胃カメラCOMMENT(10)TRACKBACK(0)  TOP

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