恐怖体験 - 電動車椅子 -

土曜日、夫と夜景の美しい丘に出掛けた。

「奈津が行きの運転を全部担当してくれるなら、付き合ってもイイよ 」 
と、夫は渋々。

私が行きたいと言ったのだから、そりゃー、まー、運転くらいはしますよ。
東京から勝沼インターまで、ナビでは二時間と言っているもの。それくらいなら、大丈夫。
入院前に思い出を作っておきたかったのだし…。

思いつきだけれど、行ってしまおー!

懸念された渋滞もなく、国立・府中インターから勝沼までは、ナビ通りほぼ二時間で着いた。
太陽が茜の雲に見え隠れしている。

このドライブの目的は「フルーツパーク富士屋ホテル」
土曜日の二日前、フジTVのドラマ「独身貴族」で見た、とびきりの夜景に魅せられた。

車を駐車スペースに入れたところで、ベルボーイに声を掛けられる。

「ご宿泊でございますか?」
「いいえ、お食事がしたいと思ってきたのですが。予約をした方が良いでしょうか?」
「本日は、レストランも満席でございまして、今一度お電話で確認をして頂けますか?」

「分かりました」
にっこりと笑顔で答えて、ホテルを後にした。

え?レストランまで一杯なの?部屋なら分かるけどねー
夫婦でそう話しながら、空いたスペースに車を停める。

ホテルのレストランに、改めて電話を掛けた。
答えはベルボーイのものと同じだった。

「20:00でしたら、予約をお取りできますが…」

夫を見ると、首を横に振っている。仕方ないか。後、3時間もあるんだものね

せっかく、ここまで来たのにねー。
そんな私の気持ちを察してくれた夫が言う。

「せめて夜景だけでも見て帰ろうよ」
「うん!有難う!」

電動車椅子を車から降ろした。
駐車場から向かいの公園に渡りたいのだけど、車の行き来が多いようだ。
私の代わりに、夫が車椅子を動かしてくれた。

「ブレーキかけてね」

そう言った夫の声は、私の耳には入らなかった。
電動のスイッチを入れた私は、疑うことなく車椅子に腰を下ろした。

すると…車椅子は急な坂道を転がり出したのだ。
一瞬、何が起きたのか理解出来ない。

ただ、坂道を私の乗った車椅子がひたすら急降下していく。

「止まらないー!止まらないよー!」

両足の力で、必死に車椅子を停めようとするのだけど、重力には勝てないのだ。
絶体絶命だ。
あらゆる惨状が頭をよぎる中…。

「ブレーキ!」

という夫の声が聞こえた。

腕に力はないはずだったけれど、とっさに両手でブレーキを引いた。




車輪が何回転かして、車椅子は止まったのだ




もー、本当に本当に、死ぬのだと思った。
下手に大けがをしたら、痛いだろうなぁ。
治験の前に、絶対に怪我をしないように、あれだけ注意されたのに…。

そんな思いが瞬時にうわーっと、心に押し寄せてくる。

足の悪い夫は、必死で私を追いかけようとしたらしいのだけど、そんなことが出来るはずもない。
私が振り返ると…息荒く立ち尽くしていた。

「ゴメンね」

そう何度も謝る夫に、私は仏頂面しか向けられない。

死ぬかもしれないところだった。

うーん。

けれど、夫がわざとした訳ではないし…。

今回のことは、「簡易電動車椅子」であったことに原因がある。
「手動」と「電動」の切り替えを、私が確認しなかったのだ。
悪いのは、私だ。

怪我もなかったのだから、夫に笑顔を見せなければ…。

そう考えを改めるのに、ちょっと時間が必要だった。10回目の「ゴメンね」の後に…

「いいよ。私の不注意なんだから。これからは気を付けるね」

そう答えた。



私が見たかった夜景 (ホテルのHPより)

富士屋ホテル 風景


いつか、ゆっくりと見られたら良いなと思う。





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2013/11/06 17:25 | 車椅子COMMENT(6)  TOP

酷暑 - 電動車椅子でお散歩 -

「暑いねー 」…という言葉が、つい口をついて出る。
例え言葉にしてみても、今置かれている状況は全く変わることはないのだけど

数日前、電動車椅子で近所(…と、車で行く時には思われた)の医院へ、一人旅を敢行した。
出だしは好調だった。気持ちが良い。太陽の光は容赦なく私の皮膚を焼くのだけど、それでも「夏」 の風は気持ちが良かった。

静寂と深い緑の中を、車椅子で進んで行く。
季節を楽しむということを、大分忘れていたみたいだ。

四季のなかで、最も苦手な夏。それが、今年は…身体と五感が「夏」を感じようとしている。
こんな夏は初めて。
色々な家の花壇に目がいく。太陽にジリジリと焼かれる、原色の可憐な花たち。

けれど、なかなか進まない。車で5分のところを電動車椅子のペースでは、50分かかった。

やっとの思いで、医院に着いた

すると、主治医は「えーっ!この暑さの中を車椅子で来たんですか!陽射しがとても危険です。お帰りは、タクシーを呼びましょう」…と仰った。
けれど、何社に電話しても「電動車椅子」を載せられるタクシー」はどれも出払っていると言うことだった。
そうよね…普通のタクシーに簡易電動車椅子(約30KG)を積んで下さいとお願いをすると、嫌な顔をされることが多いもの むぅ 

私は「お手数をお掛けしました。有難うございます。今日は簡易電動で、休みながらゆっくり帰ってみます」と、受付の女性に丁重にお礼を言った。

医院の外に出ると、陽は一段と高く昇り、頭はジリジリと焼かれるようだ。

「行きはヨイヨイ、帰りはコワイ」~ 音符


正にその通り!
今、不安障害のせいなのか、車椅子の段差が恐ろしくて堪らない。以前は、何も考えることなく、乗っていたんだけれどなぁ。いつから私は、こんな臆病者になってしまったのだろう、

「Mr.&Mrs Smith」という映画を見た私は、アンジェリーナ・ジョリーになることに決めた!
組織の任務を遂行するために、運転する車から銃をガンガンぶっ放すの ピストル
「なりきる」という魔法。

この作戦は、意外にも功を奏した 矢印

帰り道も50分。雨用に持って行った傘だけれど、日傘として大活躍。
夏の太陽を侮ってはいけない。

今の私のテーマ。
「自分に負けない」


一人で出来ることと、出来ないことを見極める。
意地を張るのではなく、冷静に…。
こんな風に思えるのも、常にサポートをしてくれる人たちのお蔭。

日々、感謝。

あ、けれどね。
もうカンカン照りの陽射しのなかでのお散歩は、控えることにします 困る







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2013/07/17 01:46 | 車椅子COMMENT(3)  TOP

そんなに、珍しい?

本日。
新橋の大学病院に行く前に、杉並の装具屋さんに立ち寄る。
以前からお願いしてあった「電動車椅子」が「出来上がりました!」とのこと ハート

この電動車椅子。簡易型なのだけど、私は嫌だった。まるで病状が進行して、完全に筋肉を失いそうだったから。

けれど、初めて「自分の」電動車椅子に乗ってみたら☆

最高だった!言葉にならない!このスピード感!

病院帰りに寄ったホームセンターで、主人が言った。
「そうか!Natsuは動けるようになっちゃったんだなー。これからは、はぐれるかもしれないな(笑)」

これまで、杖でゆっくりゆっくり歩き…すぐに立ち止まり…椅子が欲しい~!ちょっと休もう~!とうるさかった私。

その度に、主人は「後、ちょっとだから。ね?頑張ろう?さ、立ってみよう?」と言って、私の腕を掴んでくれた。だから、私と主人ははぐれようがない。私はその場にズーッと立っているか、しゃがみこんでいるかのどちらかだから。

あれほど嫌だった(自分の病気の進行を認めるような気がして…)、電動車椅子 。
「やっぱり作ろう!」と思ったのは、主人の汗を見たから。

先日の八景島シーパラダイスのデートの時 アップロードファイル
余りに広い敷地の中を、自分も下肢障害だというのに、懸命に私の背中を押してくれる。

椅子から見上げて、主人の顔を見る。

汗だくだった。

「変わるよ?」
そう言うと…
「うん、ちょっとだけ座らせて」
けれど、主人の「ちょっと」が待てずに「変わってー」と、まるで子供のよう 変な汗

それがね。広い大学病院の中を一人でスイスイ進む。風をきる。久し振りの感覚。

私は「顔面肩甲上腕型 筋ジストロフィー」なので、普通の車椅子椅子では自分の手で漕ぐことは出来ないのだもの。一般的な車椅子を使用した後は、両腕がもぎれそうな感覚になる。

「この車椅子って意味がある?」(手動型)

そう悪態をついたこともあった。

けれど、先々のことを考えて…先に手を打っていく主人の言うことを聞いて、本当に良かった!この人と結婚して、幸せだなハート とも思えた瞬間だった。


電動



この電動車椅子はオーダーなので、ちゃんと右手が操作しやすい位置にジョイスティックを取り付けてくれました。
これが既製品だったら、結局、また腕を痛めてしまっただろうなぁと思います。


電動1



今日は、お二人から声を掛けられる。
病院という場所なので、電動車椅子もそう珍しくはないだろうと思ったのだけど。

会計を待つ私に、一人の癌患者さんが声を掛けて来られた。中年の女性だった。
「今は、そんなに便利な乗り物が出来たの!良いわねー」

なので、保険のしくみ、補助制度の話をしてしばらくお喋りをしていた。

お二人目は、パーキンソン病の初老の男性。
同じように、「電動車椅子」が珍しかったようで「いいねぇ。それ」と仰る。
ご本人は、揺れる身体を一本の杖で支えていらして、本当に大変そう。

先ほどのご婦人と同じように、国の制度、治験の話などをした。

へええええ。皆さん、興味がおありになるのね!

「走ることが出来なくなっていた」私が、電動車椅子のお陰で素早く動くことが可能になった。

偏見。

これが一番、良くないのだなぁと思った。

杖を持つ時も、抵抗をした。
車椅子を購入した時も「まだ要らない!」と思った。

そして今回の「電動車椅子」…私には縁のないものだと思っていたのだけど、主人のお陰で「世界が広がりました」!有難う。マーチン☆


ただ、その後。
電動車椅子って、車酔いするんですね どよ~ん
クルクル回る練習をしていたら…帰りの車で吐きそうに…。

帰宅しても、暫らく「車酔い」状態は続き…頭が痛くて…気持ち悪い…耐えられない ><汗-GL

そうかぁ。マーチンは飛行機の中でこんなに辛い想いをしていたのだなって…初めて分かりましたわ。
耐えがたいね…マーチン、よく頑張ったんだね きらッッ


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2009/10/02 04:27 | 車椅子COMMENT(14)TRACKBACK(0)  TOP

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