シロ with 香川京子さん 朗読の会 Ⅱ

約束の時間よりも30分早くシロの自宅に着いた。ちょっと早過ぎたために、ドライブをしながら香川さんのお宅に向かう。
夫の緊張感は最高潮に達していた。彼の仕事は、主役二人を無事に会場にお届けして、お帰しすること。
私のそれは、夫以上であったと思う。その日の全てをスムーズに運ぶ陰のお手伝い。

シロはと言えば、車の後部座席で一人ゆったりと構えている。それは勿論、本日の主役ですもの。当たり前ね…。

時折、冗談を言い合いながら…それでも車は香川さんのご自宅に近付いた。

「お、ここだ。停まってくれ」

そう言って、車を降りたシロは、うやうやしく後部座席を開けてお迎えの準備をするのだけど…。
夫は「シロさん、ちょっと、ちょっと」と言いながら、慌てて右手を後ろに伸ばしてドアを閉め、向こうからやってくる自転車の青年に謝っていた。

そうよ。シロさん。ドアで道を塞いでは駄目よー。私もビックリしてしまったもの

そこへ香川京子さんがいらっしゃる。
「今日は宜しくお願い致します」
繊細な優しい声で仰った。

「こちらこそ、宜しくお願い致します。本日は、とても香川さんにお乗り頂けるような車ではないのですが、少しの間、我慢なさって下さいね」

「とんでもないわ。お迎えにいらして頂いて、有難う」

この一言で、私たち夫婦の緊張は一気に溶けた。
車中では、シロと香川さんが、ひとしきり映画「赤ひげ」のことなどをお話になっている。

この人が、日本の映画界を創ってきた人なんだなぁ…そう思うとどうにも感慨深い。


アルゼンチン共和国大使館には、入りの時間よりも30分早く到着した。
本当は、約束の時間にならなければ中に入ることは許されないのだけれど、そこはシロ。 流暢な英語で受付の人間と交渉をしている。その結果、入館が許可された


この日は冬の日の特有の、澄んだ渇いた空気だったのだけど、建物の陰に入ると寒く感じる気温だった。

私はこの日は杖歩行で、ゆっくりゆっくり、一歩前に進むのもやっとという状態で、まさか香川さんに私の速度に合わせて頂くことなんて出来る訳はない。

シロは勿論、香川さんを気遣って先に足を進めている。

「私などにお気遣いなく、どうか先にいらして下さい」

何度かそう繰り返したのだけど…。

「そんなことを仰らないで…。一緒に行きましょうよ。ねぇ?」

と、私の腕を支えて下さるのだ。私は恐縮してしまってシロに目をやると…「お言葉に甘えておけ」という合図。

それでは…と有難くご好意に甘えさせて頂いた。
この時に。強く思った瞬間だった。

香川さんは、大女優である前に…一人の素敵な女性なのだ…と、つくづく感じたのは。


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そして開演した、シロと香川さんの共演のひと時。

シロは今、バッハに酔心している。彼の師である「ユパンキ」を産んだ地、アルゼンチンの音楽と、バッハを融合させた曲を何曲も作曲している。


シロ6100



シロ 3



今回、シロが香川さんのために選んだ曲は「224章節、反復なし」という極めて困難な一曲であったそう。
「224章節、反復なし」…これをギターで演奏するということが、どれほど困難を極めるか。この曲と朗読が終わった後のシロの安堵感が、そのままこちらに伝わってくる。


シロ5



そして、拍手喝さいの内に無事にコンサートは幕を閉じた。
シロと香川さんには、心からの拍手を送った


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終演後。シロと香川さん。(香川さんは、余りに美しくて…本当に見惚れてしまうのです)


二人



記念の一枚を撮って頂いて…。映画女優と私は並んで立ってはいけないのだと…。
そんな当たり前のことを、写真を眺めていて改めて思い知る


三人



シロのアルゼンチン風バッハは素晴らしかった

香川さんの朗読に触れて「本物に触れることの大切さ」を思い知らされた気がした。

私は、こういう機会に恵まれている。
こんな時、実は私って「幸せ者なんだなぁ」と思ったりする瞬間なのだ。


コンサート終了後、日本の財産 香川さんを無事にご自宅まで送りして任務は完了!
は~、後は、「普段に戻ったシロ」との会話。

「駄賃だ」と言って(ダチンって…。今の日本では、その日本語はもう…使わないよ )、三人でご飯を食べて解散となった。

シロちゃん、次回、帰国の際には、是非我が家にいらしてね。
今回は、都合が合わずにゴメンなさいよ~。

See you !



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2010/11/23 23:55 | 文化学院COMMENT(11)TRACKBACK(0)  TOP

シロ with 香川京子さん アルゼンチン大使館にて

11月16日。
もう随分、前からシロ・エル・アリエーロ(大竹史朗/文化学院の同期生)から何度も念を押されていた。

「いいか。11月16日だぞ。忘れるなよ」

忘れようにも、忘れられる訳がない。
この日、私は彼から「アルゼンチン共和国大使館」で行われる「Shiro EI Arriero with 香川京子さん」のコンサートのための、運転手役を仰せつかっていた。

私一人の運転では、絶対的に無理がある。日本の財産に何かが起きては一大事だもの。
夫に無理を言って、同行してもらうことにした。

16日を前に、シロ様から、細かいタイムスケジュール表が送られてくる。彼はニューヨークを拠点として活躍するギタリスト。  (…と、プロフィールには書いてある…)
2009年2月には、カーネギーホールでの公演を成功させている。

俳優を生業にするものだとばかり思っていたのだけど、彼は文化を卒業後、知らない間にニューヨークに渡っていた。そして、ギタリストとして時折、帰国するようになる。
その「帰国」(本人は「来日だ」と言っているけれど)は、今では一年に二度と、定期的になった。


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これまで単独でのコンサートが多かったシロなのだけど、今回は、映画女優 香川京子さんとご一緒すると言う。彼のギターと、香川さんの朗読との共演ということだった。

その企画を聞かされたのは、もう数年も前のことのように思う。彼は「夢を実現する力」を持っている。
今回の香川さんの朗読をお聞きして、私は鳥肌が立つのを感じながらそう感じた。



会場



シロ1



シロ2



私は勿論、香川京子さんには初めてお会いする。
鳥肌の立つほど感動させられる「朗読」の力の理由は、ご挨拶をして程なく理解した。
穏やかで、とっても優しい気遣いをされる方なのだ。

今回、香川さんをお送りするには、余りにも貧相な車であると何度もシロには話したのだけど。

「香川さんは、そんなことに文句を言うような人ではない」

それは、アナタはそう言うでしょうけどさ…。私としては気が引ける。
けれど、実際にお会いしたその数分後、そんな心配はいらぬことだと私にも分かった。

その優しさには、その日、まだ驚かされることになる。

「大女優」である前に、一人の女性だということは…当たり前のようで…実は当たり前ではないと思うのだ。

- 続 -
  


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2010/11/19 23:00 | 文化学院COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

文化学院 - 懐かしき学び舎 -

ウッソやろ…。

今、これまで書いて書いて…書き綴った文章が、一瞬にして消えました ORZ

こんなアクシデント、今どき有りますかっ うあっ 絵文字名を入力してください …と、言っていても始まりません。
気を取り直すには、随分と長く書いた文章なのですけれど…。
これはきっと、神様が「今日は短くお書きなさい」と仰っているのでしょう。

昨日、偶然、我が愛しの母校、「文化学院」の前を通りかかり、「卒業式」という看板があるのには気が引けましたが…折角ですもの。そのまま事務所へ。

※注 「文化学院」とは自由を学ぶ学校です。文化服装学院」とは全く関係ありません。

この文化学院に在籍しなければ、今の私はない…と言える程、私にとっての宝物です。

2008年 2月に、新校舎竣工となりました。

以前は「2003年 旧館校舎が千代田区景観まちづくり重要物件に指定」された程の、風情ある素敵な校舎でした。
お茶の水の駅を降りて、明治大学の角を曲がって…少し坂になっている道を上がってゆくと。
風情ある、蔦の絡まるアーチが目立って見えたものです。
学校としては不本意だった様ですが、様々な雑誌やTVのロケに使われていました。(メディアという媒体で売り物にしたくないと…以前、学校の職員の方にお聞きしました。

けれど、この学校を巣立っていった卒業生たちがTV・編集のお仕事に関わられて、直接「お願い」されると、無下にお断りは出来ないと仰っていました。


ここは温かい学校です。
突然の訪問者に、事務所の方も…以前、校長を務められた先生も「まぁ、Natsuちゃん!お元気そうで!」と…全く「過ぎた時間」を感じさせない対応をして下さいます。

新校舎改築には、随分と反対の声がありましたけれど、アーチのところどころに「旧校舎」の物が使われています。
実際にこの目に映る新校舎は、予想に反するものでした。



新校舎



以前の風情を残した姿。これはこれで、素敵な建物なのだと思います。



新校舎2



けれど、学院の方針は、校舎改築と共に、大きく変わりつつあるようで。

この点は寂しくもあり、切ないところです。

昔、昔は「女学部長」を「与謝野晶子」が務めていたという歴史。名のある方を多く輩出している、小さな学校です。

学び舎…に浸る時間も、素敵なひと時です。春の日の、一日でした。



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2009/03/20 01:35 | 文化学院COMMENT(1)TRACKBACK(0)  TOP

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